前回に続きましてタイムスリップ時代劇漫画「JIN-仁-」についての考察ですが、幕末の江戸に生きる女性達という事で三人に絞り書いてきまして今回は最後の一人について書いていきたいと思います。

この女性の事を書く前に、この漫画の中で作者である村上もとかさんが描きたかった舞台として江戸の大遊郭である吉原に生きる女性達の悲哀という部分です。

この時代の独特の文化の中で生まれたこの吉原について少し調べました。

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吉原の光と影

吉原で生きている美しい女性達の中でもトップクラスの限られた花魁は吉原の街に姿を見せるだけで周囲の人達に羨望の目で見られて、普通に話しかける事も許されないのです。

この吉原は江戸幕府公認の遊郭で当時の太平の世が約300年続いた徳川幕府時代において増え続ける男性の人口(戦争による死者が減ったため、男性の人口が増えたと言われています。)に対して性犯罪の抑止力となる一つの方法として、大きな役割を果たしていました。

ただ一般の男性が遊べるような場所ではなく、限られた身分の者にのみに許された世界だったのです。

其の一 吉原の籠の鳥 野風

それでは「JIN-仁-」に出てくる美しい女性達の中で二人選んできましたが最後の一人、吉原に囲われて吉原の中でだけ特別な輝きを放って生きていた女性「野風」についてです。

野風は幼少期から吉原の中で生きてきたため外の世界を全く知りませんが、その代わりに吉原で生きていくための知識や教養を叩き込まれて育っています。限られた身分の男性のみをお客として持ち吉原の中では憧れの的ですが、広い世界を見たくて自分の部屋から遠くを見つめている事も度々あります。

仁と、まだ有名になる前の坂本龍馬が店にやってきた時には、全く相手にもしませんでしたが、自分の育ての親の病気を仁が手術して治した所から仁へ少しずつ心を開いていきます。野風には尊敬する先輩の花魁がいましたが末期の梅毒に侵され瀕死の状態で、仁に治療をお願いしますがすでに打てる手はほとんどありませんでした。

そんな先輩花魁の姿を見た野風は花魁としての自分の未来を考えていくようになります。仁はこの時を期に治療薬「ペニシリン」の普及を自分がこの時代に来た使命だと感じ、奔走することになります。そんな仁に野風は段々心から惹かれていきます。

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野風の病と開放

野風はある有名大名から求婚され、それを受け花魁を引退しようとしますが、その前の仁によって行われた健康診断で乳癌が発見され、このお見合い話が無くなると共に花魁としても引退します。

そして自由の身になった野風は吉原から始めて出て、仁の元で看護師として働くようになりますが、ある事件に巻き込まれた仁を助ける為にお金の工面として、自分を売ってしまいます。この時、野風の旦那さんとなるのが、フランス人の男性で、原作中では野風が国際結婚の第一号として書かれていました。

結局、野風と仁が結ばれることはなかったですが、仁の正体をなんとなく感じていて何度となく仁を救ってくれた野風も、咲さんと同じように仁がこの時代に生きていくためには必要だった女性でした。

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野風との別れ

野風は旦那となったフランス人のルロンさんと共にフランスへ渡ることになり、仁との別れが来ます。

再発した癌の事知りながら、残された決して長くはない時間で広い世界を見にいった野風のしたかったことは、同じく広い世界を見ようとしながら志半ばに散った坂本龍馬ともども仁のそれからの考えに変化をもたらしましたね。

ずっと狭い世界で生きてきた野風に最後、誰よりも広い世界を自由に見させてあげたいという優しさと、全ての名もないまま病に侵されて無念に亡くなっていった他の花魁達の分まで野風を国際結婚の第一号として歴史に残る女性とした所にも感動しました。

仁は真面目な漫画で何か考察も、お堅い感じになっちゃいました。でも野風だけの話としての作品も読んでみたくなる位の魅力的な女性です。(そうすると作品がちょっと重たくなり過ぎてしまう気もしますが笑)